便秘が続いている・細い便が出る
便秘が続いている・細い便が出る

便秘とは「本来排泄すべき便が大腸内に滞ることによる兎糞状便(とふんじょうべん:兎の糞のようにコロコロした便)・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。よく「数日間便が出ていない」とご来院され相談される方がいますが、便の排泄状況は人それぞれです。適度に排便がある方でも上記のような症状がある方は便秘と診断されます。
また慢性便秘症とは上記のような症状が慢性的に持続することによって、お仕事や普段の生活、睡眠などに支障をきたし、検査、食事、生活指導や薬物治療が必要な状態を指します。
慢性便秘症の有病率は国や地域、診断基準によりばらつきはありますが、およそ10〜15%程度とされています。厚生労働省の調査によると便秘症状を有する方は男性2.5%、女性4.4%と全体的に女性の方が男性よりも便秘を認めやすいものの、加齢とともに男女とも有症状者が上昇し、70歳以降になると性差が認められなくなります。
慢性便秘症の発症リスクとして、性別、身体活動性、腹部手術歴などが挙げられます。
女性に多く、女性は男性より2倍程度リスクがあると報告されています。
身体活動性が低い方ほど慢性便秘症の発症率が有意に高くなります。
特に大腸・肛門手術や婦人科手術などは慢性便秘症のリスクになると言われています。
慢性便秘症は一次性便秘症と二次性便秘症に分類されます。
一次性便秘症は主に腸の機能や働きの問題によって起こる便秘で、腸自体に明確な構造的異常はないことが多いです。代表的には以下の3タイプに分類されます。
腸の動きや機能が低下し便が出にくくなるタイプ。
便秘に加えて腹痛やガスがたまる症状があるタイプ。
腸に形や動きの異常はあるが狭窄はないタイプ
一方、二次性便秘症は他の病気や薬の影響によって起こる便秘で、原因がはっきりしています。主なタイプは以下です。
薬の副作用で腸の動きが弱くなるタイプ(例:オピオイド誘発性便秘症)
糖尿病や甲状腺機能低下症、パーキンソン病など別の病気による便秘
腸がんなどによる腸管狭窄で便の通過が妨げられるタイプ
このように、一次性便秘症は主に腸の機能障害で起こる便秘、二次性便秘症は他の疾患や薬剤などの明確な原因が存在する便秘と区別されています。
貧血を認める際には悪性疾患による便秘を考えます。また便秘をきたしうる糖尿病や甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症といった疾患も鑑別します。
大腸がんのスクリーニング検査として行います。
主に腫瘍性疾患や炎症性疾患などに伴う狭窄性器質性便秘症の鑑別のため行います。
腸管内ガスの貯留や腫瘤による腸管の圧排などを観察します。
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは、人の消化管(主に大腸)に生息している何兆もの微生物の集合体のことです。この細菌叢は腸の壁に菌種ごとの塊としてびっしりと張り付き、お花畑(flora)のように見えることから「腸内フローラ」とも呼ばれます。
慢性便秘症患者では腸内細菌叢の乱れが見られ、特に酪酸などの短鎖脂肪酸(腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑える働きを持つ)産生菌の減少や食物繊維不足が便秘の病態に関与しています。腸内細菌叢のバランスが悪いと腸の動きが鈍り、便の排出が困難になることがあります。
慢性便秘症には生活習慣の改善や食事指導・食事療法は有効です。
便秘で悩まれている方は病院でよく「食物繊維をよく摂るように」と言われたことはないでしょうか?慢性便秘症と食物繊維の摂取量に関しては必ずしも関連はないとの報告があります。ただ食物繊維摂取が不足している方には食物摂取は有効とされています。便秘改善に必要な食物繊維量は、一般には成人で1日約18g〜24g以上が推奨されています。ではどの食物にどのくらいの繊維量が含まれているか以下に示します。
普段より上記食材を取り入れることにより便秘症の改善に繋がりますので是非ご参照ください。
上記のような生活習慣指導や食事療法で便秘症が改善しない場合には薬物療法にて改善を図ります。下剤には様々な種類があり、患者様個々にあった薬剤調整が必要となります。便秘にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
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