肛門外科
肛門外科

便秘などにより排便時のいきみや長時間、座りっぱなし、立ちっぱなしの姿勢を続けることで肛門に負担がかかり、肛門クッションの血管が切れて出血したり、鬱血(血が溜まること)してイボのように出てきたもののことを言います。肛門にできたイボを痔核と言います。痔核は発生場所により「内痔核」と「外痔核」に分けられます。主な症状は出血、痛み、脱出です。
硬い便や排便時の負担で肛門付近が切れたり裂けたりするものを言います。男性よりも女性に多く出現します。出血は紙につく程度ですが、激しい痛みを伴うために排便を我慢して便秘になり、さらに症状を悪化させがちです。くり返すと肛門が狭くなり手術が必要になることもあります。
肛門の周囲が細菌に感染して化膿し、膿の管(瘻管:ろうかん)ができるものです。膿の排出、発熱、肛門周辺の痛みを伴います。長時間放置すると痔瘻がんのリスクもあります。
肛門の皮膚の周囲にできる皮膚のたるみのようなものを言います。痔核の腫れが引いた後にできる皮膚のたるみです。無症状のこともありますが、皮垂が大きくなると、排便後に便を拭き取りにくくなり、引っ掛かりや不快感を感じることもあります。長時間不潔な状態が継続すると痒みや炎症を起こすこともあります。症状がなければ治療は不要ですが、上記のような症状があれば外科的切除の適応となります。
肛門内の小さな穴から細菌が入って肛門や直腸周囲が化膿し、膿がたまる病気です。浅い膿瘍では痛み、発赤、腫脹、発熱がみられ、深い膿瘍では肛門奥の鈍い痛み、倦怠感、発熱がみられます。治療の原則は切開による排膿です。切開・排膿すると、のちに膿の通り道が残りますが、この管(くだ)や、しこりになったものが痔瘻です。痔瘻が確認された場合、痔瘻に対する根治的手術が必要となります。
肛門掻痒症とは肛門および肛門周囲に痒みをきたす疾患の総称です。人口の1〜5%に発生し、男性の方が女性に比べて3〜4倍多く、肛門科に受診する頻度の高い疾患です。肛門周囲に皮疹がなくそう痒感のあるものを言います。リスク因子として排便習慣、肛門括約筋不全、食事・精神的要因などが挙げられます。皮疹の特徴は初期には無皮疹、掻爬により発赤やびらんを生じます。慢性期には肛門のシワの浮腫、色素沈着、色素脱失を認めます。治療の基本は排便のコントロール、過剰衛生や摩擦清拭・消毒の禁止、外用薬による皮膚保護、自動温水洗浄便座の使用方法などを指導します。薬物療法は皮疹の程度がひどい場合には、ステロイド含有軟膏を2週間を限度に使用し、漸減していきます。夜間に掻爬している場合には3日間程度、眠前に抗アレルギー剤の内服を処方します。
性感染症の1つとして考えられているヒトパピローマウィルス(human papillomavirus:HPV)6、11型の感染で、成人では主に性行為による直接感染により発症します。感染後、平均2.8ヶ月(3週〜8ヶ月)で診断可能に増殖します。まれに乳幼児や性交渉のない成人、高齢者にも発症することがあります。肛門周囲、あるいは会陰部(左右の大腿と臀部で囲まれる骨盤の出口全体)の乳頭状、鶏冠状など特徴的なイボ状の形態を示します。治療には軟膏治療、凍結療法、外科的切除などがあります。
肛門やその周囲の状態を目で観察します。
肛門周囲を指で触れて、しこりや腫れなどを調べます。
肛門から指を挿入し、内部の異常(しこり、腫れ、痛み、出血の有無など)を確認します。
痔核を肛門内から肛門縁の外側まで切開し、痔核を切除します。出血予防のため、根部を結紮(しばる)します。
ジオン注射とは硫酸アルミニウム水和物とタンニン酸で構成される薬剤を痔核に直接注射する治療法です。内痔核に対して効果があり、1つの痔核に対して4箇所に分けて注射をします。投与後近くに流れ込む血液の量が減少するため、出血を止めたり、痔核の腫れが引き脱出の程度が軽くなる効果があります。腎臓の機能が悪い方や妊婦、授乳中、前立腺がんや子宮頸がんに対する放射線治療中の方はジオン注射を受けることができません。
痔瘻の瘻管(トンネル状の病巣)を切開・開放し、内容物や不良組織を除去します。再発や便漏れリスクを考慮し、シートン法(ゴムを使って徐々に切開する方法)なども用いられます。
慢性裂肛や肛門狭窄がある場合、潰瘍部の瘢痕を切開・切除し、縫合閉鎖します。必要に応じて皮膚をスライドさせて縫合部の緊張を軽減します。
事前診察にてお渡ししている錠剤を就寝前に内服してください。
坐薬を使用し排便後、御来院ください。手術予約時間30分前までに御来院ください。
来院後、術衣に着替えていただき、点滴の準備をしたあと、手術台にうつ伏せで寝ていただきます。
腰からの麻酔もしくは局所麻酔を行い、静脈麻酔も併用しながら手術を行います。
手術後、リカバリーベッドにて30分程度お休みいただき麻酔が覚めたらおかえりいただきます。手術当日は乗り物の運転はできませんのでお車での御来院はご遠慮ください。
ご来院から帰宅まで2時間程度を要する予定です。
下記が日帰り手術の料金です。使用する薬剤や材料によって費用が増減します。
| 1割負担 | 3割負担 | |
|---|---|---|
| ALTA療法(単独) | 7000円 | 20000円 |
| 痔核根治術 | 7000円〜10000円前後 | 20000円〜30000円前後 |
| 痔核根治術+ALTA | 10000円〜12000円程度 | 30000円〜35000円程度 |
| 痔瘻根治術 | 7000円〜14000円程度 | 20000円〜42000円程度 |
| 肛門周囲膿瘍切開術 | 4000円程度 | 12000円程度 |
| 肛門ポリープ切除術 | 2000円程度 | 6000円程度 |
| 外痔核血栓除去術 | 2000円程度 | 6000円程度 |
排便は我慢せず、もよおしたら普通に排便していただいて結構ですが、長時間いきむことは避け、5分以内に済ませるように心掛けます。便が硬いと傷を刺激するため、軟らかめの便になるよう食事や緩下剤を活用して調整しましょう。
排便後はお湯でやさしく洗浄し、赤ちゃん用ノンアルコールおしりふきで軽く拭き清潔に保ちます。傷口からの滲出液は約3週間程度続くことがあり、その間はガーゼを当てて保護します。
手術翌日から入浴は可能で、湯船に浸かることで痛みや腫れの軽減が期待できます。術後3週間ほどは腫れや出血のリスクがあるので激しい運動や長時間の座位、遠出は控えてください。
術後2週間は禁酒し、刺激物や辛い食べ物は控えます。規則正しい食事で便通を整え、便秘や下痢にならないようにします。
術後数日間は痛みが強くなることがあります。痛み止めをお渡ししますので指示通り服用し、必要に応じて追加服用してください。
術後は定期的に通院して創部の状態を確認し、指示に従い軟膏や内服薬を使用してください。傷の治り具合や排便状況を伝え、問題があれば早めにご相談ください。
これらの注意を守ることで、術後の合併症を防ぎ、早い回復を促すことができます。
上記以外でも何か気になることがあればなんでもご相談ください。
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