過敏性腸症候群
過敏性腸症候群

皆様は「なんとなくお腹が痛い」、「便秘や下痢を繰り返す」といったお腹の不調に悩まされたことはありませんか?
IBSは腹痛や便通異常(便秘や下痢)が3ヶ月間の間に度々起こったりもしくは継続的に続いてしまう病気です。
お腹の不調で大腸カメラを行っても一見何も異常がなく、正常と言われてしまうこともありますが、がんや炎症性腸疾患がない場合にはIBSの可能性があります。
下記のような状態の方はIBSが疑われます。
世界的には有病率(IBSと診断された方)はおよそ10%と報告されています。
男性と女性の有病率を比較すると、男性8.9%、女性14.0%と女性の方が1.6倍多くなっています。
年齢に関しては30歳代〜50歳代に多い傾向にあります。
つまりミドルエイジの女性に多い傾向にあります。
IBSは便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4種類に分類されます。
急激な腹痛や頻繁な水様性下痢が特徴です。男性や若年層に多い傾向があります。
硬い便やコロコロ便が出て、強くいきんでも排便が困難です。若い女性に多いです。
便秘と下痢が交互に現れるタイプで、症状の変動が大きいです。
上記のいずれのタイプにも当てはまらず、膨満感や腹鳴、ガス症状が主体となる場合もあります。
この分類は便の形状や頻度に基づき診断され、症状に応じて治療方針が異なります。
頻度的には便秘型、下痢型が多く、それぞれ34%、36%とされています。
過敏性腸症候群(IBS)の原因は多岐にわたり、主に脳と腸の相互作用(脳腸相関)の異常が重要な役割を果たしています。具体的には以下のような要因が関与しています。
精神的なストレスや不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因が自律神経のバランスを崩し、腸の働きに異常をきたします。ストレスは腸の運動を速めたり遅らせたりし、腹痛や下痢、便秘の原因となります。また、腸の感覚を過敏にし、痛みや不快感を強めます。
感染性腸炎の回復後に腸内細菌のバランスが崩れることがあり、これが感染後IBSを引き起こす場合があります。
暴飲暴食や不規則な食生活、特にFODMAP(発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)を多く含む食品の摂取が症状を悪化させることがあります。
腸の蠕動運動が過剰または不足し、その結果、消化管症状を引き起こします。
遺伝的要因や内臓の知覚過敏、免疫系の異常も関連していると考えられています。
これらの要因が複雑に絡み合い、過敏性腸症候群の症状を引き起こしたり悪化させたりします。生活習慣の改善やストレス管理、食事内容の見直しが重要です。
IBSの診断は主に症状と病歴の問診に基づきますが、他の消化器疾患と区別するためにさまざまな検査が行われます。
症状としては、腹痛や腹部不快感があり、便秘や下痢を伴うことが多いです。
症状は数ヶ月以上持続し、排便で症状の軽減や悪化がみられることが特徴です。
問診で生活習慣やストレスの程度も詳しく聞き取ります。
主な検査方法としては血液検査・尿検査で貧血や炎症、感染症、甲状腺疾患や糖尿病などの全身的な異常がないか調べます。便検査(便潜血検査・便培養検査)で消化管の炎症や感染症、大腸がんなどの疾患を除外します。また腹部エコー検査やCT検査で腸以外の臓器の問題がないか確認します。大腸カメラ検査で炎症性腸疾患や腫瘍性病変の有無を詳細に観察し、必要に応じて生検(組織検査)を行い異常がないことを確認することもあります。胃カメラも症状に応じて行われることがあります。
これらの検査で器質的疾患(炎症や腫瘍など)が除外された上で、過敏性腸症候群の診断基準に合致すれば診断されます。
IBSの治療法として生活習慣の改善、薬物療法、食事療法、心理療法があります。
規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動が推奨されます。ストレスを避け、ストレス管理を行うことも重要です。暴飲暴食や刺激物(脂っこいもの、アルコール、香辛料、炭酸飲料、コーヒーなど)は避けることが望ましいです。
症状に応じて、腸の運動を整える消化管運動調整薬、腸内環境を整える整腸剤(プロバイオティクス)、下痢止め、便秘薬、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などが処方されます。患者の体質や生活リズムに合わせて薬を選びます。例えば、下痢型にはセロトニン受容体拮抗薬、便秘型には緩下剤などが使われます。
1日3回の規則正しい食事を心がけ、食物繊維の摂取を増やすことが望ましいです。刺激物の控えめや、低FODMAP食(特定の炭水化物を減らす食事法)も効果が報告されています。水分補給も大切です。
ストレスが強い場合や薬物療法だけで効果が不十分な場合に、ストレスマネジメントやリラクゼーション療法を取り入れる場合があります。これらを組み合わせて患者ごとに最適な治療を調整していきます。過敏性腸症候群は慢性的な症状で完治が難しいこともあるため、症状のコントロールを目指す治療となります。
IBSは完全に「治る」というよりは、生活習慣やストレスの改善、薬物療法、食事療法、心理療法などで症状をコントロールしながらうまく付き合っていく病気です。症状は再発しやすく、体質的な側面もあるため治療を続けることが重要です。適切な治療により、腹痛や下痢などの症状は大幅に改善できる場合が多く、症状の安定や緩和が期待できます。
IBSの内服治療期間は症状や個人差によりますが、ガイドラインでは4〜8週間薬を服用して効果を判断することが一般的です。症状が安定し改善すれば内服を中止できることもありますが、IBSは再発しやすいため、症状の再発防止のために長期にわたり症状に応じて薬を調整しながら服用を続けることもあります。薬物療法は症状に合わせて使い分けられ、生活習慣の改善や心理的サポートと組み合わせて行うことも重要です。したがって、「いつまで」と明確に決められるものではなく、医師の判断で個別に決定されるのが一般的です。
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