大腸がん
大腸がん

大腸がんは、大腸に発生する悪性腫瘍です。大腸がんは、早期発見と適切な治療が重要で、進行すると便が詰まってしまったり、出血する可能性があります。さらに進行すると、遠隔転移といって、大腸以外の臓器(主に肝臓や肺)に転移して転移先の臓器の機能を失わせ、最終的には命に関わる状況となります。
環境的要因(高タンパク、高脂肪摂取など)、遺伝的要因、年齢などが複雑に関与し、複数の発がん遺伝子の活性化、およびがん抑制遺伝子の不活化が生じると考えられています。
大腸がんの症状は進行状態によって異なりますが、以下のような症状が見られることがあります。
またがんができる大腸の部位により症状も若干異なります。
貧血、腹部腫瘤、腹痛、便は下痢が多い、腸管の内腔が広いため狭窄症状を起こしにくい
血便、粘血便、便通異常(便秘、下痢、糞柱の狭小化)、腸閉塞、左下腹部痛、腹部膨満感
大腸がんは高齢者に多く発症しやすい病気であり、特に50歳以上でリスクが高まります。性差に関しては、男性の発症率が女性よりもやや高い傾向があります。しかし、若年層でも発症することがあり、家族歴や遺伝的要因が関与している場合もあります。
大腸がんの発がんに関与する遺伝子は大きく「発がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」に分かれます。発がん遺伝子は正常な細胞増殖をコントロールする役割がありますが、変異すると細胞の増殖が制御不能となりがん化を促進します。発がん遺伝子は細胞増殖のアクセル役と考えられます。がん抑制遺伝子は細胞増殖のブレーキ役として働き、DNA損傷の修復や異常細胞のアポトーシス(自殺)を促します。これらの遺伝子に異常が生じて機能が失われると、制御されない細胞増殖が起こり、がん化が進行します。
発がん遺伝子:K-ras(12p)
がん抑制遺伝子:APC(5q)、p53(17p)
大腸がんは、現在の日本におけるがん死亡原因の上位に位置しています。日本でのがんでの部位別罹患者数は大腸がんが最も多くなっています(男性:前立腺がんに次ぐ第2位、女性:乳がんに次ぐ第2位(2020年))。がんの部位別死亡者数も大腸がんは肺がんについて2番目に多くなっています(男性:肺がんに次ぐ第2位、女性:第1位(2022年))
大腸がんを早期発見するためには定期的な検査が重要です。以下は主な検査方法となります。
便中の微量な血液を検出する検査で、初期段階での発見に役立ちます。
大腸がんに対する便潜血検査の感度(病気の人を正しく陽性と判定できる確率)は53〜100%、特異度(病気でない人を正しく陰性とできる確率)は87〜95%です。
大腸カメラを用いて大腸内を直接観察し、ポリープやがんを確認できます。
がんもしくはがんが疑われるポリープが見つかった場合には組織を採取し本当にがんかどうかを確かめます。また早期がんであるか進行がんであるかも大腸カメラを行うことで予想できます。進行がんになりつつあるポリープの特徴として、大腸に張りが出る緊満感や病変の崩れ、凹凸不整、潰瘍形成などがあります。
腫瘍の位置や大きさを確認するために、CTスキャンが行われます。特に進行したがんの場合、転移の有無を調べるのに有効です。
大腸がんの治療は病期や患者の状態によって異なります。主な治療法は以下の通りです。
早期の大腸がんの場合、大腸カメラを用いて腫瘍を除去することが可能です。内視鏡的ポリープ切除術は内視鏡の先端からスネアと呼ばれる細い金属の輪を出し、腫瘍の根元にかけて輪を締め、高周波電流を流して腫瘍を焼き切ります。
EMRは病変の下の粘膜より下の層に生理食塩水などを注入して膨らませ、その部分を持ち上げてからスネアで病変を切除します。
進行した大腸がんの場合、外科的手術が必要となります。結腸や直腸の一部を切除し、場合によってはリンパ節も取り除きます。
手術後や進行がんに対しては、化学療法が用いられることがあります。抗がん剤を使用して腫瘍の縮小や転移の防止を目指します。
特に直腸がんの場合、放射線療法が手術と併用されることがあります。
大腸がんと食事は密接な関係があり、大腸がんになるリスクを高める食事がいくつかあります。高脂肪・低食物繊維の食事(加工食品やジャンクフード)や赤身肉や加工肉(ベーコン、ソーセージなど)の過剰摂取、過度なアルコール摂取、食事のリズムの乱れなどの不規則な食生活、炭水化物の過剰摂取(特に精製された糖質:白米、白パン、砂糖など)がそれに該当します。該当する食物を多く摂取しがちな方はぜひ摂取量を控えるようお勧めします。
大腸がんの予防には、以下のような4つのポイントがあります。
大腸がんは初期段階で症状が出にくいため、40歳以上の人は年に1回、便潜血検査などの検診を受けることが推奨されています。
また、大腸カメラ検査を定期的に受け、リスクのあるポリープを早期に発見・除去することが最も効果的な予防法です。
食物繊維が豊富な野菜、果物、穀類、豆類を積極的に摂ることが大腸がん予防に効果的です。食物繊維は腸内環境を整え、発がん物質の滞留時間を短くします。
牛乳やカルシウム、ビタミンDを含む食品も予防効果があるとされます。赤身肉や加工肉の摂取を控えることも重要です。
喫煙は大腸がんのリスクを高めるため禁煙が推奨されます。また飲酒は発がんリスクを増やすため節酒が望ましいです。適度な運動を習慣化し、肥満を防ぐことが大腸がん予防に効果的とされています。
肥満は大腸がんのリスク因子であるため、健康的な食生活と運動により適正体重を維持することが予防に繋がります。
これらの生活習慣の改善を組み合わせることが大腸がんの予防に最も有効です。
40歳を過ぎたら、大腸がん検診(便潜血検査など)を少なくとも年1回受けるのが推奨されます。それは40歳以降は大腸がんの罹患者数が増加するためです。
大腸カメラ検査の一般的な受診頻度は、異常がなければ3~5年に1回が目安です。
ポリープ切除歴やリスクが高い方は、1年に1回や1~2年に1回の頻度で内視鏡検査を受けることが推奨されます。
がんは放っておいたポリープがなる場合がありますが、すべてのポリープががんになるわけではありません。大腸ポリープの中でも特に「腺腫性ポリープ」というタイプががん化しやすいとされており、大腸がんの約8〜9割がこの腺腫性ポリープから始まると考えられています。腺腫性ポリープは最初は良性ですが、時間をかけて細胞が異常に変化してがんに進行する可能性があるため、見つかった段階で切除することが大腸がん予防に非常に重要です。
大腸がんは、早期の段階であれば内視鏡を使った治療が可能であり、実際に治療の選択肢の一つとなっています。内視鏡治療は、大腸内視鏡を用いてがんの病変部分を切除する方法です。がんが粘膜内にとどまっている早期大腸がんに対して適応されることが多く、患者様の日帰りや短期間の入院で行われるケースもあります。
大腸がんにならないために大腸カメラ検査を受ける頻度は、健康な人で過去に異常がなかった場合は、40歳以上で5年に1回程度が目安です。ただし、年齢が高くなるほどリスクが増えるため、40代以降はより頻繁に検査を検討することが望ましいです。大腸ポリープが発見された場合は、切除後の状態やポリープの種類・数によって、半年から1年、または1~3年の間隔で再検査が推奨されます。便潜血検査で陽性になった場合や血便などの症状がある場合は、3年以内であっても大腸カメラを受けることが勧められます。
食事では、赤身肉や加工肉の過剰摂取を控え、野菜や果物、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂ることが大切です。食物繊維は腸内環境を整え、便通をよくし、大腸がんリスクを減らします。また、カルシウムの摂取も推奨されています。生活習慣では、適度な運動を習慣化し、肥満を避けること、禁煙や節酒も大腸がん予防に有効です。喫煙や過度な飲酒はリスクを高めるため控えるべきです。定期的な大腸がん検診(便潜血検査や大腸カメラ検査)を受けることで、早期発見・早期治療につなげることが重要です。
家族に大腸がんの方がいる場合、その他の家族も大腸がんになりやすいと考えられています。親や兄弟姉妹(一次親族)が大腸がんを発症していると、その家族のリスクは一般の人より2倍から3倍高まると報告されています。特に50歳未満で発症した場合や複数の親族が罹患している場合は注意が必要です。これは遺伝的要因に加えて生活習慣も影響しています。家族歴がある場合は定期的な大腸カメラ検査などのスクリーニングが重要です。これらにより早期発見と予防に努めることが可能です。
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