熱傷
熱傷

熱傷とはやけどのことで、やかん・鍋のお湯、コーヒー・味噌汁など熱い飲み物、フライパンやアイロン、炊飯器・ポットの蒸気での事故や高温シャワーやお風呂、調理中の油はねなどさまざまなタイミングで起こり得ます。
熱傷深度はⅠ度(表皮のみ)、Ⅱ度(真皮まで)、Ⅲ度(真皮全層から皮下組織まで)、Ⅳ度(筋肉や骨、臓器まで)に分類されます。初期は判定が困難なことがありますが、色調、疼痛、水疱の有無などで判断します。
熱傷面積は成人では「9の法則」や「5の法則」、小児ではLund-Browder法が用いられます。手のひらは体表面積の約1%とし、全身対比で算出します。
深達性Ⅱ度やⅢ度の重症熱傷では、脱水や炎症、腎機能障害を評価するために血液検査(電解質、血清尿素窒素、クレアチニン、アルブミン、血糖など)や尿検査(ミオグロビン尿の有無など)を行います。
熱傷による感染症リスクを早期に把握するため、白血球数や発熱の経過観察も重要です。
一酸化炭素中毒や気道熱傷が疑われる場合、動脈血液ガス分析、胸部X線検査、気管支鏡検査、胸部CT検査を行い肺や気道の状態を確認します。
熱傷(やけど)の治療は、その重症度や範囲によって異なりますが、基本的には以下の段階と方法で行われます。
応急処置として、まず受傷直後に水道水で少なくとも20分以上冷却します。衣服は無理に脱がさず、冷やすことで痛みや症状の進行を抑えます。指輪や時計などは外し、やけど部分は水疱が破れないように保護します。
初期治療の目的は熱傷の進行防止と感染予防です。治療は以下の通りです。
表皮のみが赤くなる状態で、通常3~4日で治癒します。ステロイド外用などで炎症を抑えます。
真皮に及び水疱が形成される。浅いものは湿潤療法(ワセリン、軟膏など)で治療し、bFGF製剤(フィブラストスプレーなど)で創傷の治癒促進と瘢痕予防を行うこともあります。深いⅡ度熱傷は治癒に3週間以上かかり、場合によっては手術が必要です。
皮下組織まで及び皮膚は乾燥・壊死。通常は自力での再生が期待できず、植皮などの外科手術が必要になります。広範囲の場合は熱傷性ショック状態となり、専門の熱傷センターでの集中治療が必要です。
治療では感染防止が極めて重要で、外用抗菌薬や抗生物質の内服を使うことがあります。湿潤環境を保つ創傷被覆剤も効果的です。
熱傷の水疱(みずぶくれ)は、自分で潰さないことをお勧めします。水疱は傷口を細菌から守る「天然の絆創膏」の役割を果たしているため、潰すと傷がむき出しになって細菌感染のリスクが高まり、治癒が遅れるだけでなく、痛みや跡が残るリスクも増します。もし水疱が自然に破れてしまった場合は、皮を無理に剥がさず、清潔に洗浄して軟膏を塗り、被覆材で保護してください。
ただし、水疱が非常に大きくて関節の動きを妨げる、または強く張って痛みが強い場合は自己判断で潰さず、医療機関で適切に処置してもらうほうが安全です。自己で針などを使って潰すことは感染の危険が非常に高いため絶対にやめましょう。
やけどの跡が残るかどうかの判断材料は主に「やけどの深さ」です。Ⅰ度熱傷(表皮レベルの浅いやけど)は赤くなりヒリヒリしますが、基本的にやけどの跡は残りません。ただし色素沈着(しみのような茶色い跡)が生じる場合があります。Ⅱ度熱傷は浅達性(浅い)と深達性(深い)に分かれます。浅達性Ⅱ度熱傷は2週間ほどで治癒し、跡はほとんど残りませんが色素沈着や色素脱出(白くなること)が見られることもあります。深達性Ⅱ度熱傷は治癒まで3〜4週間かかり、跡が残ることがあります。Ⅲ度熱傷は皮膚の全層に損傷が及び、治癒に時間がかかり多くの場合で跡が残ります。多くは皮膚移植や手術が必要で、その場合も必ず跡が残ります。
やけどの初期治療が不十分だと深くなり跡が残りやすくなるため、早期の正しい治療が重要です。また、色素沈着は紫外線によって悪化するので、紫外線対策も跡を残さないために有効です。
TOP